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「秋日狂乱」

僕にはもはや何もないのだ
僕は空手空拳だ
おまけにそれを嘆きもしない
僕はいよいよの無一物だ


それにしても今日は好いお天気で
さつきから沢山の飛行機が飛んでゐる
――欧羅巴は戦争を起こすのか起こさないのか
誰がそんなこと分かるものか


今日はほんとに好いお天気で
空の青も涙にうるんでゐる
ポプラがヒラヒラヒラヒラしてゐて
子供等は先刻昇天した


もはや地上には日向ぼっこをしてゐる
月給取の妻君とデーデー屋さん以外にゐない。
デーデー屋さんの叩く鼓の音が
明るい廃墟を唯独りで賛美し廻つてゐる


ああ、誰か来て僕を助けて呉れ
ヂオゲネスの頃には小鳥くらゐ啼いたらうが
けふびは雀も啼いてはをらぬ
地上に落ちた物影でさへ、はや余りに淡い!


――さるにても田舎のお嬢さんは何処に去つたか
その紫の押花はもうにじまないのか
草の上には陽は照らぬのか
昇天の幻想だにもはやないのか?


僕は何を云つてゐるのか
如何なる錯乱に掠められてゐるのか
蝶々はどつちへとんでいつたか
今は春ではなくて、秋であつたか


ではああ、濃いシロップでも飲まう
冷たくして、太いストローで飲まう
とろとろと、脇見もしないで飲まう
何も、何も、求めまい!…



(中原中也)





*デーデー屋
でいでい屋。雪駄直しを職業とする者。

*ヂオゲネス
古代ギリシャ哲学者。アンティステネスの弟子で、ソクラテスの孫弟子。
死が迫ってきたとき、「私が死んだら、その辺に投げ捨てておくれ」と言った。
一説には「河に投げ込んでおくれ」と言った。

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