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連休と彼女と鴨の毛抜き。
三連休初日、心の準備ままならぬうちに「彼女」がやってきました。

彼女――

K氏の長年の大切な友人であり、最近恋をしてしまった、という女性であり、何も知らないうちは私にとっても尊敬できる素敵な女性であり、K氏に生卵を投げつけた後ガチンコすべく電話して失敗(逆に慰められた)して以来、その存在をどう受け入れればいいのかわからないまま棚上げになってる彼女――Mさん、としましょうか。

そんな彼女が、東京にやってきました。


ふーーーーーーー。。。


まあ、何だったのかな結局…修羅場、にはならなかったけど、どこか緊張感のある空気と、ふっとそこから抜けた穏やかな空気とが交互にやってくる、ちょっと現実離れしたような連休でした。

でもまあ、眠るに眠れなかったのは、確かです。
彼女はもっと眠れなかったと思います…最後の日は体調崩して帰っていったし…
K氏まで昨夜から高熱出してふらふらしてます。
その具合が先週あたりの私の風邪?にそっくりなので、もしかしてウイルス性の何かに感染しちゃったのかもしれません。

私はといえば、自分の態度の曖昧さと冷たさに泣き、ひとまず逃避するために開いた祖父の遺稿集を読んでは泣き、たまたまNHKに出演してた宮古島出身アーティスト・下地勇の唄に泣き、と細々に泣いてばかりの連休でした。
そこに睡眠不足と鼻風邪が加わり、さすがの私も最後はヘロヘロ…切ない時間に苦しい時間、穏やかな時間に楽しい時間、いろんな時間を交互に味わい、考え、悩み、笑い…本当に不思議な時を過ごしました。



――それはこんな感じで始まりました。


土曜日、れいんさんと新宿で打ち合わせ後に部屋に戻ると、土曜出勤帰りのK氏が。


「今晩お客さんが来るねん、誘えそうだったらmekeも友達誘っていいよ」

「本当?鴨がきてるもんね。会社の友達?(←何人かに連絡してみるが皆つながらず)」

「うーんとね、実はね、Mちゃんが来るねん」

「・・・(唖然)」


ちょっと…ちょっと待ったーー!!
前にRさんが突然押しかけてきたときもそうだけど、どうしてこの人はギリギリになってこういう爆弾発言をするのか??バカか?バカにしてるのか?脳みそチョコボールか?
唖然としすぎて口が開きっぱなしの私。(−−)

説明によると、本当は彼女を含めて他にも3−4人、京都からくる予定であった。
さすがにMさんが来るのは少し躊躇ったけど、他にも来るからバランスがとれるだろうと判断した。
それで知り合いのお客さんに鴨を送ってもらって(例の散弾銃入り捕りたてぐったり羽つき鴨)、買い出しして準備してたら、突然他の皆が来れなくなってしまった。
慌ててMさんに連絡したら、既に電車に乗って出発してしまったところであった…ので、現在彼女はこちらに向かってきている、とのこと。


…こころのじゅんびが…あーーーもうっ、この男は…!!!(><;)

その後、K氏の元同僚でうちにも何度か遊びに来ているOさんという女性が来る事に。
まあ、何とか三人こっきりは回避できましたが…


暫くして、まずはOさんがやってきました。
それから、K氏に迎えられてMさんが。

あああ…顔がまともに見れない…駄目だこりゃ(T-T)


彼女の心中も決して穏やか…なものではなかったと思うのですが、相変わらず可愛らしい声で、穏やかな様子で、初対面のOさんともすぐに打ち解け、そんな感じでちょっとおかしな晩餐はスタートしたのでした。


…前回の記事をご覧になればおわかりのように、決して「愉快」とは言い難い夜でした。

彼女に悪いな、と思うのは傲慢でもあり「一般的立場として」おかしな事なのかも知れません。
だって自分とコイビトが住んでいる部屋に、もうひとりのコイビト――しかも世間一般のプラトニック感情から一歩進んでしまった女性(つまりSEXしてる女性)――がやってきて、心中穏やかでいられる女の子がいたら是非お目にかかりたいもんです。
普通、こんな状況下にあったらちょっと負けん気の強い女の子なら猛烈に抗議、もしくはボイコットしてることでしょう。

それでも…彼女に対して心のこもったもてなし、会話ができずにぎこちなくある私はつくづく最低な人間だなあ…と、最後は自分が情けなくて仕方なく、とても不愉快な一夜でした…
氏のことを除けば、摩擦する理由なんてどこにもないはずの彼女なのに。

その感情がなんとなく伝わってしまったのか。

自然、Mさんとの会話はOさんを介して回転することになり、消極的な態度故、宴席から一歩身を引いていしまうものとなり、最後は完全に外れてしまいました。
肝心のK氏はというと…料理と配膳を何往復もするうちに、疲れ果ててぐっすりと眠りこけてしまったのです…この男は本当に…(T-T)


その夜。

布団を二組縦に引いて、横に寝る。
そこはさすがに、K氏は隅に寝かして私はその隣に。
私の隣にMさんが横になり、もう一方の端にOさんが横になりました。
こういう位置関係をいちいち想像するのもまた実践するのも気が疲れます…
とはいえ、「前科」があるこの男を真ん中におくのは流石に呑気な私にも無理でした。


眠れやしない、長い夜――


早朝、ふと目を覚ますと、彼女とK氏の姿がありません。
Oさんはぐっすり眠っておりました。
どうやら隣の部屋でお話中の模様。


…眠れやしません…(;;)


そっと布団を滑り出し、コートを羽織って外に出ました。
階段を降り、いつもと違う方向に向けて歩き出したところで、ベランダからK氏が呼ぶ声がしました。
ちょっと振り返り、「さんぽに」と目で言って、角を曲がりました。
きつい時、辛いときに脱走癖のある私なので、慌てて部屋を飛び出してきたのかもしれません。
…が、だからって追いかけてきてほしい、というのもちょっと違う。
そんなんで、穏やかに過ごせるかもしれない時間を台無しにしてしまうのは嫌。
とはいえ、ふたりきりでいるところなんて想像するのも難儀…というわけで、早朝散歩に出たのが日曜の朝のこと。

オチは前回記事のとおり。

右翼?のにーちゃんにナンパされたのでびびって部屋に戻りました。
それでも、一時間ほど朝日を浴びて帰るとだいぶ回復しました。



Oさんが起きてきて、K氏がサンドイッチとコーヒーを淹れてくれました。
それから四人でゆっくりとおしゃべり。
しかしやはり私のぎこちなさは浮いてしまいます。
あまりに上の空はOさんに悪いと思い、開き直って別室で引きこもり。
現実逃避にいろいろやりましたが、なかなか集中できず。

そのうち、三人は出かけることになった様子。
…いえ、Oさんは自宅に戻り、後の三人で出かけよう、ということになったのです!

ひい〜もう、ムリ〜!!(><)

何度となく、「私は見送るよ」とK氏に言ったのですが。

後でひたすら謝られましたが、氏にしてみれば私ひとり部屋に置いていくとロクなことにならない…と思い、連れ出したとか。
二人を見送ったにせよ、どっちもどっちで確かにロクな結果にはならなかったでしょうけどねえ…



Oさんと別れた後、我々が向かったのは恵比寿の写真美術館。
『光と影展』という企画をやっていたので、行ってみることに。
彼女のお目当ての写真家さんもいたりして、私もちょうど今の心境に触れるような作品もあったりし、閲覧中は三人のバランスなんて考えなくてもいいので、なかなか楽しめました。
週末はとてもいいお天気で、恵比寿の空はぽっかりと抜けるように青く、風は強く、空を見ながら歩いていると、並んで歩けない三人のモヤモヤから浮遊できるようで、ちょっとだけ救われました。

――でも、それからがまたつらい。

K氏には、「ちょっと仕事があるからMちゃんと一緒にもうひとつ美術館に付き合ってあげて」と耳打ちされ。
…いやいや、3人でもギリギリなのに2人っきりはとても無理、それにMさんの顔色もものすごく悪いし…と断ってみました。
次の美術館が表参道にあるということでタクシーにて移動。
お昼時でしたが、Mさんはあまり食欲がないとのことで、それでも少し座って休む必要はあるだろう、とお昼にすることに。

…しかし、リサーチなしにいきなり表参道でお店を発見するのも難しく、彼女も疲れきっている様子だったので、私が就活中によく利用していたカフェに入ってみました。


…やっぱり、微妙な時間。


そしてついに。


「時間もないし、先に行ってくるね」


と、彼女が席を立ってしまったのです。


あああ…(;;)



暫く、K氏とふたりぼーっとしたのち。


「意思表示を明確にすべきやったなあ…」

「当たり前や…私は恵比寿で帰りたかった」

「あそこで別れておくべきやったな」

「てか別に見送りでよかったのに…」



のんびり、おだやかな冬の午後なだけに。
切ない感覚はどうしようもなく気だるく身体を支配し、それでいて正直なところ、ほっとしている自分がいて。


それから、K氏とふたりでお散歩することにしました。
表参道を歩いて、原宿まで行って、ちょうどその時着ていたコートを買ったお店を探し回って、探せなくて。
鼻風邪がひどくなったので、途中でハンカチを購入。
ふと氏が以前行ったことのあるカレー屋さんを思い出し、そのお店を探して原宿裏通りをうろうろと散歩。
諦めかけたところで発見し、深い竹の椅子に沈み込んで、ほっと一息。。
二度目の昼食は、肩の力が抜けたこともあり、ものすごく美味しかった。
氏は電話で仕事を始め、私は妹と久々に電話で話しました。
暫くその店でくつろいでから、帰路につくのでした――


その間、彼女は何を思い、何を見、何を感じたのでしょうか。


自分の好きな人が他の女の子と住んでいる部屋にやってくる、というのはそう楽しいもんじゃないと思うのですが、まして私のあの曖昧な態度、どっちつかずの未熟な態度、K氏の態度を目の当たりに、遠くからやってきた彼女は一体何を思ったんだろうか…と、どうしようもなく苦しい、奇妙な心持ちになります。
かわいそう…だなんてこれっぽっちも思いませんが、気持ちと気持ち、男と女と女のすれ違いの切なさが、ただただやりきれない。


せめて、あとすこしでも、私と彼女にとって意味のある時間を過ごさなきゃ…

と、深呼吸して、部屋に戻りました。




美術館をめぐり、本屋をめぐり、彼女はゆっくりと帰ってきました。

K氏は再び台所に立ち、最近はまっている中華――小龍包つくりにとりかかりました。

そして私は、終に鴨の羽むしりを経験することになりました。



「どうやってむしるのー?」

引っ張ってみなさい



…というわけで(^^;)

ビニール袋の中に詰め込まれた中から一番小さな鴨を選び。
ベランダに新聞紙をひいて、おそるおそる羽をむしり始めました。
小さい頃飼ってた鶏が、学校から帰ってみたら祖母と母の手により絞められているのを目の当たりにして以来、どうにもトリの下準備が恐ろしくてならないのですが――大体、近頃の一般家庭で動物をナマから下準備するなんて光景自体ほとんどないと思いますが――乗り越えなければいけない壁のような、そんな気がしました。

彼女は窓辺にしゃがんで、それを見ていました。

小さな鴨は足を折り曲げ、目は眠っているようでした。
鳥の足がどういう位置にどんな具合に収まっているのか、手にして間近にみたことはないのでちょっと面白い。
どこからむしればいいのかわからないので、とりあえず背中から。
思わず、「ごめんねーちゃんと食べるからさー」と呟いてしまいました。

引っ張ると、確かに抜けました。

初めは痛々しかったその姿も、むしられてトリハダの面積が広がっていくうちに美味しそうな鶏肉になっていきました。
青い羽毛はふわふわと美しく、Mさんが紙袋に集めて捨ててくれましたが、いくつかは夜風に吹かれてふわふわと舞い散りました。
あらかたむしり終わったところでK氏を呼び、頭と羽と首を切り落とすと、そこにはまるまる一匹の鴨肉がごろり。
中抜きはさすがに無理なので、Mさんとふたりして氏を取り囲み、その様子を観察しました。


お尻のほうから、穴を開けて手を入れる。
まずは砂ズリ、それから小腸その他の消化器官をひとつづつ取り除き、心臓。


「どこで覚えたの?この解体」

「書物とわずかな経験と、勘」

「トリでさえこんなに大変なのに、牛や豚を解体するってえらいこっちゃだねえ…」


Mさんもしきりに「かわいいねえ」「綺麗やねえ」とため息をついていました。



じいちゃんが生きてた頃、島に帰ると私が帰ってきた、ということでよくトリを絞めてくれました。
気性の荒い名古屋コーチン、それも絞められるのを本能で察知しているトリを捕まえるのがまず大変だったでしょうが、庭の隅で絞めたそれを祖母が羽をむしり、その晩にはスープになって食卓に上りました。
まだ幼い神戸の従姉妹が来るときにも絞められましたが、その現場は見せないよう気を使われました。彼女が見たら卒倒して倒れるかもね。私だって飼ってた鶏を絞められた時は物凄く祖母らを恨んだし、気持ち悪くて口をつけられなかったし。


でも、実際自分で羽をむしってみると。

すごく可愛く思えるし、何より美味しそうに思えます。

内臓を抜き、肉から外された骨はまるで箱のよう。
こんな単純な仕組みで、空を飛ぶ動物が構成されている不思議さ。
砂ズリの中には、ぎっしりと砂がつまっていました。
これで噛み砕いて、消化すると。
とても不思議。



その晩は、割合穏やかに過ごせました。
彼女は今読んでいる本――高村光太郎の本を紹介してくれ、他にもお勧めの本を幾つか紹介してくれました。

ドストエフスキーとトルストイが、「文豪」の壁をとっぱらって読むとエンターテイメントとして面白い、ということ。
カフカが読めるなら、ボルヘスの方がずっと面白いから絶対読んだほうがいい、ということ。

外国小説といえば「少年少女名作シリーズ」系のものを繰り返し読んでるだけなのでそういう紹介は本当に参考になりました。
きっかけがないと、新しいジャンルに手だしできない私なのです。

私は…というと、最近の乏しい読書の中から、
初めて読んだ村上春樹『海辺のカフカ』が案外、エンタメとしても面白かったこと。
よしもとばななが高校の頃から大っキライだったのに、つい最近読めるようになったこと。
アメリカ人作家にしては珍しく手にしたジュンパ・ラヒリの短編集『停電の夜に』。
あと、ベタなメロドラマですが『シラノ・ド・ベルジュラック』。

共通してスキな本も幾つかありました。
『ドン・キホーテ』の原作とか(^^)


テレビをつけると、NHKアーカイブス『あの人に会いたい』で作曲家・山田耕作がとりあげられていました(動いている映像があること自体に衝撃)。


「中国に行ったらな、中国人の音楽やってる人知っとったで、山田耕作」


と、Mさん。


「すごいですね〜今の高校生に聞いても絶対わからんと思いますけど」


番組中に流れた、『赤とんぼ』と『からたちの花』。
彼女は細い、高い声で口ずさみました。
とてもとても、綺麗な声でした。





三人で小龍包を包みました。
氏が練った皮を、Mさんが麺棒で伸ばして。
具の中には、この間島から送られてきたパクチーの束を刻んで入れて。
あれこれと試行錯誤しながら、包んで、蒸して、食べる。
また、包んで、蒸して、食べる。
単純作業に没頭して、わだかまりなく食べる美味しいもの。
それは切ない感情をちょっとだけ緩やかにさせてくれて、今このときが大切な時間であることを感じさせてくれる。


そして夜になって。
布団を二組しいて、三人横になって。
K氏は私のかけぶとんの中に入ってたちまちぐっすり眠りだしました。
疲れているのか、彼女もすぐに寝付いた様子でした。
私だけが、いつまでも眠ることができずに。



明け方――


バタン、というドアの音ではっと目が覚めました。
じっとしていると、K氏が部屋の中にはいってきて、そこにはもうMさんの姿はありませんでした。



「今何時?」

「六時過ぎ」

「Mさんは?」

「今帰った」



挨拶もできなかったけれど。
でも仮に起きていたとして、どう挨拶をすればよかったというのか。

『またね』?

…何か変な感じ。


そっと帰った彼女の選択は正しかったと思います。
まだまだ、複雑なこの関係は言葉で表せないし。


それから、ふたりして布団に縦に位置を正し、枕を並べてぐっすりと眠りました。
ふたりでいるのはやっぱり、ひどく心地よく、ほっとするものでした。

荷物を抱えた彼女の長い帰路を思うとまた胸が重くなるのですが、彼女の自尊心のためにも私のためにも、くだらないこんな思いは眠りの底に追いやってしまった方がいいと思い、ひたすらぐっすりと眠ったのでした…


色恋沙汰とかエログロとか。 / comments(0) / trackbacks(2) / meke /
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